So-net無料ブログ作成
検索選択
前の5件 | -

細胞分化とポリADPリボース合成

こんにちは。ブログに関して長い夏休みをいただいてしまいました。
休みの間に訪問していただいた方、ありがとうございます。
開設以来7800を超えるページアクセスがありました、感謝です。
不定期更新になっていますが、今後もごひいきに。

『長い目で見れば科学研究は人類にとって役立つ』
ということが読んでいる方に伝わっていたらよいなあと思っています。
大発見というのは簡単に見つかるものじゃないけど、新発見を探求する過程の中で
人材教育(論理的な考え方やあきらめない精神)が行われると思っています。

日本がアラブ諸国のような産油国なら教育はそれほど必要ないのかもしれないけど、
日本が今の生活を続けるのであれば“高い科学水準と最高のものづくりの国”である
必要があると思います。


今回は細胞分化とPARP活性についての文献(1984年)を紹介します。

Induction of murine teratocarcinoma cell differentiation by suppression
of poly(ADP-ribose) synthesis
Ohashi Y, Ueda K, Hayaishi O, Ikai K and Niwa O.
PNAS 1984 7132-7136

この文献は京都大学(当時)の丹羽太貫先生、早石修先生(大阪医大所属)たちの
グループにより報告されました。

取り上げた理由は日本からの報告だからというのと、蛍光顕微鏡を使った研究データ
が掲載されていたからです。

細胞分化に伴うポリADPリボースの合成活性の変化については、この報告よりも
古くから複数報告されていました。
大半の文献では細胞が分化するとポリADPリボースを合成する能力が低下すると
報告されています。
当時は細胞培養技術もタンパク質の発現を見るのも大変な労力を要していたし、
培養皿で細胞を分化させる実験系も多くありませんから価値のある報告として、
評価されていたと思います、これらの研究成果が積み重なって現在の再生医療
研究は生まれてきたのだと思われます。

論文ではEC-A1細胞(最近の文献では出てこない細胞ですね)をレチノイン酸で
分化させる実験系を採用しています。

レチノイン酸(活性型ビタミンA)によるマウスのテラトカルシノーマの
細胞分化作用は1978年に報告されています。Cell 1978 15 393-403
本研究が報告された1984年においては核内のレチノイン酸受容体の存在は想定されて
いたものの分子の同定には至っていません。

蛍光顕微鏡を用いた実験は蛍光ラベルした抗体を用いた免疫染色です(図6)。

簡単に書くと2次抗体に蛍光物質(フルオロセイン)を結合させておいて、
細胞に存在する標的物質(論文ではポリADPリボースを抗ポリADPリボース抗体
で検出)の存在を確認するという目的の実験です。

抗体が実験に使われだしてから随分と早く技術進歩があったのだなあと思います。
蛍光顕微鏡はニコンのものを使っています、1980年の論文が参考論文にありました。


今回の実験の内容を簡単に記載すると下記のようになります。

『EC-A1細胞をレチノイン酸処理すると細胞の形態変化(分化)が起こり、
その際にPARPのタンパク質量が大きく減るようだ。
PARPのタンパク質量の減少によるポリADPリボース合成活性の低下は、
EC-A1細胞の分化に重要でレチノイン酸の代わりにPARP阻害物質を添加すると、
レチノイン酸よりは効率が悪いけど、レチノイン酸と同じように細胞が分化した。』

26年前の時点で挑戦できる実験を全て組み合わせたという印象を持ちました。
PARP阻害剤が大変注目されているので、最新の研究ツールを使って細胞分化と
PARPの関係性を確かめる論文は今後、沢山報告されると思います。
温故知新と思って興味のある方は論文読んでみてください。PMIDは6095269です。

今日は井上陽水さんの『少年時代』を入力します。
暑い日がまだまだ続きます。無理せず今年の夏を楽しみましょう。

『暑かったけど、短かったよね、夏。』 稲村ジェーンより
桑田さんが早く元気になりますように。では。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

トポイソメラーゼIのポリADPリボシル化

毎日、暑いですね。
ブログ停滞気味ですみません。今後数回分の紹介論文は決まっているのですが
記事を書くのが進まない状態です。

今回は1983年から1984年にかけてのPARP研究の進展を書きます。
トポイソメラーゼ1のポリADPリボシル化についてです。

この頃になるとPARP関連の論文の中の日本人研究者の占める割合が
急激に低下しているようです。

最新のMolecular CellにPARP1に関する総説が掲載されています。
近年のPARP1の論文の発表された内容を紹介しているのですが、
残念ながら引用されている文献の中に日本からの報告は極めて少数でした。
PARP研究の発祥地である日本から新しい成果が生まれることを期待しているのですが、
今は研究資金がiPS細胞関連に集中している感じなので、難しいですかねえ・・。

The PARP side of the nucleus: molecular actions, physiological outcomes,
and clinical targets
Krishnakumar R, Kraus WL.
Mol Cell 2010 39 8-24


ようやく宮崎県の口蹄疫が落ち着きそうだとの報道がありました。
外国から日本へのウイルス感染経路の分析結果が出たら、報道して欲しいと思います。)
ウシは食べ物(牛肉や牛乳)として不可欠の存在ですが、実験室でも大切な存在です。
細胞培養に使うウシの血清や生化学実験などで使うウシ血清アルブミンなど。
また、生体物質の精製材料としても良く使われていたようです。

大学の生物の講義の雑談で、教授が研究室に配属されたときの最初の役割が、
ウシの組織を分与していただくために食肉工場へ通うことだったと話されていた
のを覚えています。


1983年から1984年にかけて同時期に2つのグループから、
『ウシの胸腺から精製したトポイソメラーゼ1はポリADPリボシル化
されるとその活性が阻害される。』
という内容の論文が報告されました。
当時はウシの胸腺が入手しやすい実験材料だったのだと思います。

[1] DNA topoisomerase I from calf thymus is inhibited in vitro
by poly(ADP-ribosylation)
Jongstra-Bilen J, ITTEL ME, Niedergang C, Vosberg HP, Mandel P
Eur J Biochem 1983 136, 391-396

[2] Poly(ADP-ribosylation) of DNA topoisomerase I from calf thymus
Ferro AM, Olivera BM
JBC 1984 259 547-554


研究の発端は
[1] ポリADPリボースを精製した結果、微量のトポイソメラーゼが一緒に精製された。
[2] トポイソメラーゼIを精製した結果、微量のポリADPリボースが一緒に精製された。
ことから始まります。

そこで、精製したタンパク質にADPリボースの供与体であるNADを加えてみると、
トポイソメラーゼのポリADPリボシル化が見られ、酵素活性は阻害された。
という結果を得ています。

この頃になると、タンパク質の解析実験としてSDS-PAGEをして
クマシーブルー染色することは一般化したようです。
プラスミドDNAを用いたスーパーコイル化アッセイの写真もありました。
興味のある方は、詳しいデータを文献にてご覧ください。

解析対象のトポイソメラーゼ1は、抗癌剤のイリノテカンの標的として有名です。
トポイソメラーゼの活性の発見は1971-72年の頃で、イリノテカンの日本発売は
1994年です。イリノテカンは日本のヤクルトと第一製薬(現在、第一三共)が開発。


簡単にまとめると、
トポイソメラーゼは染色体DNAの構造の中にある“ねじれ”を解消するときに
働く酵素です。2重らせんDNAの構造のねじれを解消して、DNA複製やDNA修復、転写
などDNAの関わる現象が適切に行われるようにしています。
トポイソメラーゼの働きを阻害するとDNAから情報を読み取ったり、DNAを複製して、
娘細胞に分配する細胞分裂がうまく出来なくなったりするため細胞の増殖が抑制されます。


クロマチン構造変換酵素の活性が翻訳後修飾によって影響を受けるということは、
約30年前から研究されていたわけですね。
実験手技や解析ツールは変わりましたが、
今でも論文で主張していることはそれほど変わっていません。

新しい酵素が多数見つかってきて、その中にはがんや病気の細胞に選択的な分子も
あります。それらを標的とする(副作用の少ない)薬が今後登場すると期待してます。

それでは、今回は夏の曲ということで、松任谷由美さん『真夏の夜の夢』


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

ASC2010の要旨 [阻害剤関連]

こんにちは、今回は阻害剤関連の情報について記載します。

アボット社のホームページのプレスリリースにPARP阻害剤のABT-888について
米国臨床腫瘍学会(ASCO 2010)で発表したことが記載してありました。

要旨は下記のアドレスのページで検索できます。
http://abstract.asco.org/ConfCatView_74_S.html

自分は学会に参加したわけではないのですが、
上記検索ページで開発中の阻害剤に関する要旨を読みました。
学会自体は1カ月前に終了しています。

現在開発中の阻害剤の発表は下記のものがありました。

MK-4827(メルク) PARP1/2阻害剤 経口 卵巣癌(P1)の結果の報告 
Veliparib/ABT-888(アボット) PARP1/2阻害 経口 転移性乳癌(P2)の報告ほか 
BSI-201(サノフィアベンティス) PARP1阻害 注射 グリオーマ(P1)の報告ほか
Olaparib/AZD2281(アストラゼネカ) PARP1阻害 経口 TNBC(P1/P2)の報告ほか 

開発中化合物で発表なし
PF-1367338/AG014699(ファイザー) PARP1阻害 注射 メラノーマ(P2)

それぞれの発表に関して、会場で報告されたデータを見たわけではないので、
(申し訳ありませんが)記載は控えます。

サノフィ社のBSI-201でトリプルネガティブ乳癌に関するP3試験に進んでいますので、
上記の報告よりも、現在は開発ステージが進んでいる化合物もあるかもしれません。


今回はこのへんで。曲はエリック クラプトンのChange the World

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

ウエスタンの次はクロマチン免疫沈降

こんにちは、だいぶ暑くなってきました。

今回は1983年(昭和58年)の文献を紹介します。
当時の出来事は、東京ディズニーランド開園、NHKドラマ『おしん』が流行、
初代ファミコン発売などです。自分の記憶にも残っている気がします。

医薬品関連だと第二世代抗ヒスタミン薬が登場した年です。
1983年にメキタジン製剤やフマル酸ケトチフェンが発売というような時代でした。

ヒット曲は『めだかの兄妹』わらべ(灯油販売のトラックでよく流れる曲)
『CAT’S EYE』杏里(森三中が出ているロト6のCMで流れる曲)
『瞳はダイアモンド』松田聖子(缶コーヒーボスのCMで現在流れている)
などです。


今回紹介する文献はJBCから杉村先生グループとSmulson先生グループの共同研究から。
筆頭著者は前回に続いてMalik Najmaさんです。
Malikさんは、この論文のあとにヒストンアセチル化で同様な実験をしたのち、
オンコスタチンMの研究に移られています。

クロマチン関連因子や特定のヒストン修飾に対する特異抗体を用いて複合体を精製し、
その中に含まれる分子(タンパク質や核酸)の同定とその分子の機能解析という
流れの実験を見かけます。
このような流れの実験が可能であることを、ポリADPリボース抗体を使用して解析
したのが今回の文献です。
(引用はあまりないんですけど)ヒストン修飾研究の技術開発において、
創始的な報告なのだろうと思います。


Immunoaffinity fractionation of the poly(ADP-ribosyl)ated domains of chromatin
Malik N, Miwa M, Sugimura T, Thraves P, Smulson M.
PNAS 1983 80 2554-2558

実験としては、ポリADPリボース抗体をCNBrセファロースに結合させた抗体カラムを
作製し、MNase処理したオリゴヌクレオソームを添加して抗体と結合した分子群の性状
を解析しています。
今では一般的な(古くなった?)手法ですが、1983年当時は斬新なアイデアだったと
思います。PCRは普及していないし、シークエンス技術も未熟、cDNAが入手できない
から過剰発現系はない。今とは環境が全く違います。


文献では実際にポリADPリボース抗体を結合させたビーズから、
ポリADPリボース修飾を受けたヌクレオソームとPARPが濃縮されたことを示しました。
また、濃縮されたヌクレオソームに含まれるDNAには抗体に結合しなかった
ヌクレオソームに含まれるDNAと比べて、一本鎖切断を有するDNAが多いことを
述べています。
(詳細は文献をお読みいただきたいと思います。)

PARPとDNA修復の関係を調べる過程で、いろいろな実験技術のアイデアが試され、
そこから発展した技術が現在に活かされているということを感じます。
今回も専門用語が多くなってしまいましたが、良いアイデアは生き残るってことや、
過去の文献を調べることも重要ってことを感じたので取り上げてみました。


新しいことを自分で見つけることは、もちろん楽しいけれど、
古いことを知ることもなかなか面白いですね。
最近、サリドマイドやバルプロ酸などの薬効が再び見直されています。
たまには研究室の先輩たちの古い実験ノートを見直してみるのも良いかもしれません。
面白いデータが発掘できるかもしれません。


今日は『瞳はダイアモンド』を入力してみます。
では、また次回に。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

ウエスタンブロット法によるPARPの検出

こんにちは、少しずつ暑くなってきましたが周囲では風邪が流行っているので、
ブログに訪問されている方もお気をつけてください。

今回は1982年の論文から紹介します。
Antibody to poly(adenosine diphosphate-ribose) polymerase and its use in
chromatin analysis
Malik N, Bustin M and Smulson M.
Nucleic Acids Research 1982 10 2939-2950 PMID:

手品で一瞬にして紙が燃えるのを見たことがありませんか?
あの紙の正体はニトロセルロースという物質です。ニトロ基がついた化学物質は
燃えやすいということを、高校の化学で勉強された方もいると思います。
あるいはダイナマイトの原料はニトログリセリンであることをご存知かもしれません。

実はニトロセルロースは研究室でウエスタンブロッティングやノザンブロッティング
という実験に使われています(最近は別の製品を使っていることもある)。
自分もニトロセルロースを使うことがあります。
実験に使うのがもちろんメインですが、オープンキャンパスの場では
手品のように勢いよくニトロセルロースが燃えるのを体験していただくこともあります。
(実験用の製品は他の成分も含まれており少し勢いは弱いです。)


今回は、PARPをウエスタンブロットで検出した文献です。
現在の感覚だと、それだけで論文が書けるのかと思われるかもしれません・・・。
新しい実験法としてウエスタンブロットがいろんな研究室に広まり出したのが、
この頃のようです。
文献では実験法にウエスタンという名称は出てきていません。

(ウエスタンブロットについてはこちらのサイトを参考にしてください。
協和発酵キリン社の抗体物語のページです。)
http://www.kyowa-kirin.co.jp/bioworld/KotaiMono/20040804.html

文献の図2Bに最初のPARP1のウエスタンブロット結果が掲載されています。
当時は、特異抗体と反応させた後に[125I]ラベルされたProtein Aを加えて、
抗体のある位置をオートグラフィーで検出したようです。

現在、細胞のアポトーシスの評価指標の一つにPARP1の切断をウエスタンブロット
で見ることがありますが、この当時は気づかれていなかったでしょうね。


1982年ごろの研究環境はこのような様子だったんですね。
ウエスタンブロットは、その後いろんな改良が加わり、現在はラジオアイソトープを使わず
高感度に検出できるようになりました。

それでは、今回はゴダイゴさんのモンキーマジック(1978年)。
次回は1983年の文献を紹介します。
来週はちゃんと金曜日に更新したいなあと思っています。

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:学問
前の5件 | -
メッセージを送る

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。